子供が私より英語を話せるようになった日の、嬉しさと寂しさ|同じ母親として

公開日: 2026-10-03
子供が私より英語を話せるようになった日の、嬉しさと寂しさ

レッスンが終わる少し前、画面の向こうの先生が何か言って、子供が声を出して笑いました。何がおかしかったのか、私にはわかりませんでした。子供は笑いながら英語で返して、先生がまた笑う。私は隣で、半分もわからないまま、二人の間に流れているものを、ただ見ていました。

うれしい。本当に、うれしい。何年も前、画面の前でうつむいていた子が、今は私の知らない言葉で笑っている。願っていた光景そのものです。それなのに、レッスンが終わって部屋がしんとした時、胸のどこかに、小さくすうっとした感じが残りました。「もう、私の出番はないのかな」。

この気持ちを、誰かに言ったことがありますか。「子供が自分より英語を話せるようになって、少し寂しい」なんて、贅沢な悩みに聞こえそうで、私も長いこと口にできませんでした。でも、ぽつりぽつりと、同じ気持ちを打ち明けてくださるお母さんがいます。「うれしいはずなのに、取り残された気がして」と。レッスンのあと、「今日、何が面白かったの?」と聞くことさえ、少しためらってしまう。答えが英語で返ってきたら、私にはわからないから。

そして、その寂しさの底には、もう一つの気持ちが隠れています。「私は英語ができないから、この先、この子の役に立てない」。教えられない親には、もう役割がないのではないか、という不安です。

その寂しさは、間違った感情ではありません。それだけ近くで、長く、この子の英語を見てきた証拠です。遠くで見ていた人には、寂しくなる資格すらないのですから。

親より子供が英語を話せるようになった日は、ゴールのひとつです

思い出してみてください。英語を始めた頃、あなたは何を願っていたでしょうか。「私みたいに苦労してほしくない」「私が行けなかった場所に行ってほしい」。多くのお母さんが、そんな願いを口にされます。つまり最初から、願いの中には「私を超えてほしい」が入っていたのです。

だから、あなたが教えられなくなった日は、失敗の日ではなく、最初の願いが叶い始めた日です。教えられる親でいることが目的なら、子供は永遠に親の下にいなければならない。そうではなかったはずです。寂しさは、ゴールテープを切った時に吹く風のようなもの。うれしさと一緒に来るのが、自然です。

私は、英語が得意でないお母さんに、これまでたくさんお会いしてきました。そして、その子供たちが親を超えていく瞬間にも。親御さんはみな、同じ顔をされます。笑いながら、少しだけ目が潤む。あの顔を、私は「うまくいった家の顔」だと思っています。

ここからの役割は「先生」ではなく「一番の聞き手」

では、教えられなくなった親に、出番はもうないのでしょうか。私は、ここからが本番だと思っています。子供が本当に求めているのは、英語を話せる相手ではなく、自分の話を聞いてくれる相手だからです。

先生とのやりとりで笑った子は、その笑いを誰かに話したい。「今日ね、先生がね」と言いかけて、お母さんが「英語わかんないから」と引いてしまったら、その話はそこで終わってしまいます。逆に、わからないままでも「なにそれ、教えて」と身を乗り出してくれる人がいれば、子供は自分の英語を日本語で説明し始める。その説明が、実はいちばんの復習になっています。

英語を話せる親が隣にいると、子供はうっかり甘えてしまいます。「ママ、これなんて言うの?」と聞けば、答えが返ってくるからです。でも、話せない親が隣にいる子は、自分で考えて、自分で言い直すしかない。この「しかない」が、子供を伸ばします。

英語が得意でないお母さんは、教える役から外れた分、聞く役に専念できます。これは負け惜しみではなく、私が長年たくさんの親子を見てきて、確かめてきたことです。

今日からできる小さなこと——わからないことを、隠さない

ひとつめは、「今の、なんて言ったの?」と教えてもらうこと。わからなかったことを隠さず、そのまま子供に聞く。「ママにも教えて」と言われた子は、少し得意そうに、少し照れながら、説明してくれます。親が生徒になる時間は、子供にとって、自分の英語が「本物」だと確かめられる時間です。

ふたつめは、子供の英語を「すごい」ではなく「面白い」で受けること。「すごいね」は評価の言葉で、続けると子供は評価されるために話すようになります。「面白いね、それどういう意味?」は、会話を続ける言葉です。評価より、興味。この切り替えだけで、子供が家で英語の話をする回数は変わっていきます。

そして、もしできれば、話を聞いたあとに「教えてくれてありがとう」と言ってみてください。感謝は、評価とは違います。評価は子供を上か下かに置きますが、感謝は隣に置きます。隣に置かれた子は、また話しに来ます。

「ママ、英語で何て言うの?」と聞かれて答えられなかった頃のことは、「ママ、英語で何て言うの?」と聞かれたら|答えられなくていい理由という記事に書きました。あの頃「答えられなくていい」と書いた理由が、今、こういう形で返ってきているのだと思います。

あい子供英会話のレッスンはマンツーマンで、フルセンテンスで答える指導を徹底しています。子供が先生と笑って話せるようになるまでを、私たちは画面の向こうで見ています。そしてその先の「聞き手」は、お母さんにしかできない役割だと思っています。

取り残されたように感じたあの日、本当は、あなたが一番遠くまで連れてきたのです。寂しさは、その距離の分だけ。それを抱えたまま、「教えて」と言える親でいませんか。子供の英語の、一番の聞き手として——同じ寂しさを知る母親として、私も一緒にそこに座っています。

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