子供の「楽しい」を信じきれないお母さんへ|同じ母親として、楽しいだけで大丈夫か迷った話

公開日: 2026-10-07
子供の「楽しい」を信じきれないお母さんへ

レッスンが終わって、画面を閉じたお子さんが、くるりと振り返って言う。「楽しかった!」。満面の笑み。本当なら、そのまま一緒に笑えばいい場面です。

なのに、口では「よかったね」と返しながら、頭の中では別の声が動いている。「楽しいだけで、身についているの?」「今日、何を覚えたの?」「このまま楽しいだけで、月謝に見合うのかな」。笑顔の裏で、そろばんをはじいている自分がいる。

そして、そんな自分に気づいた瞬間、いちばん嫌な気持ちになる。子供が「楽しい」と言ってくれているのに、それを素直に喜べない。私は何を求めているんだろう、と。そんなご相談を、これまで何度もいただいてきました。私自身にも、「楽しかった」の一言を、心のどこかで値踏みしてしまった夜があります。

まず、これだけは先にお伝えさせてください。子供の「楽しい」を信じきれないのは、あなたが冷たい親だからではありません。それには、ちゃんとした理由があります。そして、その理由がわかると、少し楽になります。

「楽しい」を信じきれないのは、自分の英語が楽しくなかったから

私たちの多くは、英語を「楽しくなかったのに、頑張った」記憶で覚えています。単語帳、赤シート、テスト前の夜。楽しいかどうかは関係なく、やらなければならないからやった。そして、頑張った分だけ点数が返ってきた。あの記憶の中では、「苦しい」と「身につく」がセットになっていました。

だから、わが子が「楽しかった!」と言うと、どこかで警報が鳴るのです。楽しいということは、苦しんでいないということ。苦しんでいないなら、身についていないのではないか——。理屈ではなく、体で覚えた方程式が、勝手に作動している。

これは、あなたの性格の問題ではありません。あなたが受けてきた英語教育が、そういう形だったというだけのことです。私も、アメリカで英語が話せずに部屋にこもっていた頃、「楽しい」と「英語」が同じ文の中に並ぶなんて、想像もできませんでした。

子供の「楽しい」は、成果の前に来るものです

ここで、順番の話をさせてください。子供の英語において、「楽しい」は成果の後についてくるご褒美ではなく、成果の前に必要な土台です。

理由は単純で、子供は楽しくないことを続けられないからです。大人なら、目的のために苦しさに耐えることができます。でも子供は、「将来のため」という動機で毎日画面の前に座り続けることが、まだできません。座り続けさせるには、「楽しい」しかない。そして、続いてさえいれば、英語は嫌いにならない。嫌いにならなければ、耳と口は、少しずつ確実に育っていきます。

逆の順番を、私はたくさん見てきました。「楽しい」を後回しにして、先に成果を求めた結果、英語そのものを嫌いになってしまった子。そこからの立て直しには、時間がかかります。嫌いになった子が、また好きになるまでの道のりを「英語が嫌い」が「英語が好き」に変わる、3つのきっかけに書きましたが、読んでいただくとわかるように、遠回りなのです。

だから、お子さんが今「楽しい」と言ってくれているなら、それはもう、いちばん難しい部分をクリアしているということ。成果への焦りは、その土台の上に、いずれ乗ってくるものを待っているだけです。焦りそのものは、消さなくていい。順番だけ、間違えないでほしいのです。

今日からできる小さなこと

ひとつめは、「楽しかった!」の後に、ひとつだけ質問をすることです。「何が?」。それだけ。「今日は何を習ったの?」ではなく、「何が楽しかったの?」。

すると子供は、「先生が犬の真似したの」「アイスクリームの名前をいっぱい言った」「ぼくが答えたら先生がすごいって言った」——そんな答えを返してくれます。よく聞いてみてください。そこには、ちゃんと中身があります。犬の真似をした場面では動物の名前が出ていたはずで、アイスクリームの名前を言ったなら味の単語を口にしたはずです。「楽しかった」の中身が言えるなら、その子はその時間、確かに学んでいます。楽しさと学びは、子供の中では分かれていないのです。

ふたつめは、「楽しかった」と言った日を、カレンダーに小さく印をつけていくことです。丸でも、シールでも構いません。成果の記録ではなく、「楽しかった」の記録。数か月たって見返したとき、印がずっと並んでいたら、それはそのまま、お子さんが英語を嫌いにならずに来た日々の証拠です。成果が見えにくい時期に、お母さん自身の焦りをなだめてくれるのは、この印だと思います。

あい子供英会話がテストをしないのは、この「楽しい」を守るためです。テストは、できなかったことを数える仕組みです。それを子供の英語に持ち込むと、「楽しい」が「怖い」に変わるのを、これまで何度も見てきました。だから進捗は、毎月、日本人の教育プランナーが先生と一緒にレッスンの外で分析し、保護者の方にお伝えする形にしています。子供には楽しい時間だけを、親には見えにくい伸びを。役割を分けているのです。

「楽しかった!」に、素直に笑い返せなかった自分を、責めないでください。その裏側で計算してしまうのは、あなたがこの子の将来を真剣に考えているからです。焦りは、愛情の別の顔です。

でも今日は、計算を一回だけお休みして、「何が?」と聞いてみてください。返ってきた答えを、一緒に笑ってあげてください。「楽しい」を信じきれない夜を、私も通ってきました。だから、一人で値踏みしないで。子供の「楽しい」を信じる練習を、一緒に始めませんか。

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