同じ悩みをもう3年繰り返している気がするあなたへ|同じ母親として、らせんの話をします

公開日: 2026-10-08
同じ悩みをもう3年繰り返している気がするあなたへ

引き出しの整理をしていて、古い手帳が出てきた。何気なくめくったページの端に、自分の字で「英語、全然話さない。どうしよう」と書いてある。日付を見ると、3年前。

手帳を閉じて、ふと気づく。今日、私が夫にこぼした言葉は、「英語、話さないんだよね」だった。3年前と、まったく同じ悩み。子供は3年分大きくなって、靴のサイズも変わって、好きなものも変わったのに、私だけが同じページに立ち止まっている——。

「私、この3年、何をしていたんだろう」。そう思って、しばらく手帳を握ったまま座り込んでしまった。そんなご相談を、私はこれまで何度もいただいてきました。私自身にも、ノートの古いページに同じ言葉を見つけて、息が詰まった夜があります。

先に、お伝えしたいことがあります。同じ悩みを3年抱えているように見えても、あなたは同じ場所にはいません。それを確かめる方法を、今日はお話しさせてください。

同じ「話さない」でも、中身はまるで違います

3年前の「話さない」を、もう少し細かく思い出してみてください。あの頃の「話さない」は、たぶん「一言も出ない」でした。先生に「Hello」と言われて固まる。名前を聞かれて、お母さんの顔を見る。口が動かない。

では、今の「話さない」はどうでしょう。単語は出る。「Dog」「Red」「I like」までは言える。でも、文にならない。先生に質問されて、単語をぽつぽつ並べたところで止まってしまう。だから「話さない」と感じる。

言葉にすると、どちらも「話さない」です。でも、3年前の悩みと今の悩みは、まったく別のものです。3年前は「口が開かない」ことが悩みでした。今は「開いた口から、文が出ない」ことが悩みです。口は、もう開いている。それは、3年前のあなたが、いちばん欲しかったものだったはずです。

悩みの言葉が同じだから、同じ場所にいる気がする。でも、悩みの中身を見れば、確実に前に進んでいる。これは慰めではなく、長くお子さんを見てきたご家庭に、ほとんど例外なく起きていることです。

そしてもうひとつ、見落としがちなことがあります。3年前のあなたは、「話さない」ことに慌てて、レッスンの横で口を出していたかもしれません。今のあなたは、「話さない」と言いながらも、子供が単語を並べるのを待てるようになっている。悩んでいる本人の側も、3年前と同じではないのです。

同じ悩みを繰り返している気がするのは、悩みが「上の段」に変わったから

子育ての悩みは、解決して消えるものだと、私たちはどこかで思っています。「話さない」が解決したら、悩みがなくなる、と。でも実際には、悩みは消えるのではなく、一段上の悩みに変わります。「一言も出ない」が「単語は出る」になったら、次は「文で言えない」が悩みになる。「文で言える」になったら、次は「自分から話さない」が悩みになる。

らせん階段を、思い浮かべてみてください。上から見下ろすと、ずっと同じところをぐるぐる回っているように見えます。でも横から見れば、確実に上に登っている。あなたが「同じ場所にいる」と感じるのは、悩みを真上から見ているからです。横から見れば、3年分、高い場所にいます。

成長していないのは、あなたでも、お子さんでもありません。ただ、悩みを表す言葉が、ずっと同じだったというだけ。「話さない」という言葉が、3年前と今とで、指しているものが違うことに、誰も教えてくれなかっただけです。1年でどのくらい変わるかの正直なところは、子供の英会話、1年でどのくらい話せる?|正直な変化のタイムラインにも書きましたが、変化はいつも、悩みの言葉より先に、悩みの中身に現れます。

今日からできる小さなこと

ひとつめは、3年前の悩みを、一行で書いてみることです。手帳があるなら、そのページのすぐ下に。なければ、紙の切れ端でいい。「3年前:先生に何を聞かれても、一言も出なかった」。そして、その隣に今の悩みを、同じように一行で。「今:単語は出るけど、文にならない」。並べて、見比べてください。同じ「話さない」が、別の言葉になっているはずです。私はこれを、悩んでいるお母さんに何度もお願いしてきました。書いている途中で、表情が変わる方が多いのです。

ふたつめは、「まだ」を「もう」に言い換えてみることです。「まだ文で言えない」は、裏返せば「もう単語は出る」。「まだ自分から話さない」は、「もう聞かれれば答える」。同じ事実を、「まだ」で見るか「もう」で見るか。子供に向かって言うときも、「まだ言えないね」より「もうここまで言えるね」のほうが、次の一歩が出やすくなります。「まだ」は足りない部分を数える言葉で、「もう」は登ってきた段を数える言葉だからです。

長く続けてくださっているご家庭ほど、毎月の進捗のやり取りの中で、ご相談の内容が「上の段」に変わっていくのを、私は見てきました。最初は「一言も出ない」、次は「文にならない」、その次は「発音が気になる」、そのまた次は「もっと難しい本を読ませたい」。悩みが変わっていくことそのものが、私たちにとっては成長の記録です。

3年前の手帳に、同じ言葉を見つけたあなたへ。その言葉は、同じ場所にいる証拠ではなく、3年間、この子の隣に立ち続けてきた証拠です。悩みは消えません。でも、一段ずつ、確実に上に登っています。

らせんの真上からではなく、横から見る目を、一緒に持ちませんか。3年後、また「話さない」と書いていたとしても、その中身はきっと、今とは違うものになっています。その日まで、一人で登らないでください。

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