寝かしつけのあと、暗い部屋で子供の寝顔を見ていたら、昼間の自分の声がよみがえってきました。「なんでやらないの」「あなたのために言ってるんだよ」。そう言いながら、私はあの時、本当は何を守ろうとしていたんだろう——。
「あなたのために」。その言葉が本当なら、子供の「やりたくない」を、なぜあんなに受け止められなかったのか。答えは、認めたくないところにありました。英語を続けさせていたのは、子供のためというより、私の不安のためだった。周りの子に置いていかれたくない、あんなにお金をかけたのに、私が英語で苦労したから。並べてみると、主語はぜんぶ私でした。
そして布団の横で、小さな声で「ごめんね」と言った。起きているのかいないのか、わからないまま。——そんな夜を過ごしたお母さんは、たぶん一人ではありません。「押し付けていた自分に気づいて、どうしたらいいかわからなくなった」というご相談を、これまで何度もいただいてきました。私自身にも、そういう夜がありました。
だから最初にこれだけは言わせてください。押し付けていたと気づけた時点で、あなたはもう押し付けていません。気づかないまま続けていた昨日までのあなたと、気づいた今夜のあなたは、もう違う人です。
子供に謝るのは、親の負けではありません
「親が子供に謝ったら、示しがつかない」。そう思って、謝りたいのに謝れなかった、という声もよく聞きます。私も昔はそう思っていました。親は間違えてはいけない、間違えても認めてはいけない、と。
でも、考えてみてほしいのです。親が一度も謝らない家で育った子は、何を学ぶでしょうか。「大人は間違えない」ではなく、「間違えたら隠すものだ」を学びます。逆に、親が「ごめんね、ママが間違えてた」と言える家で育った子は、間違えてもやり直せることを、言葉ではなく体験として知ります。
これは英語の学びにも、まっすぐつながっています。間違えることを怖がる子は、口を開かなくなる。間違えてもやり直せると知っている子は、通じなくてももう一度言い直せる。あなたが謝った夜は、子供にとって「間違えても大丈夫」の見本を見た夜でもあったのです。
謝れる親の家の子は、自分もまた謝れる子になっていく——そんなご報告も、これまで何度かいただいてきました。親の謝り方は、そのまま子供の謝り方になります。示しがつかないどころか、いちばん大事な「示し」を、あなたはあの夜、見せたのだと思います。
「あなたのため」が、いつのまにか「私のため」になっていた
最初から押し付けるつもりだった親なんて、いません。始まりはきっと、「この子の世界が広がりますように」という純粋な願いだったはずです。ただ、続けているうちに、月謝の重さや、周りの子の話や、自分の過去が少しずつ混ざっていく。願いが不安に変わる瞬間は、静かで、気づきにくいものです。
私は、「あなたのために」という言葉が口から出そうになったら、それを合図にするようにしています。この言葉が出るときは、たいてい、私のほうが何かに追い詰められている。子供のためというより、自分を安心させたくて言っている。そう気づけるようになってから、口に出す前に、一度飲み込めるようになりました。
お金をかけてきた分だけ、引き返せない気持ちになるのも、よくわかります。その気持ちについては、以前子供の英語に何百万かけてきた親に、たった1つだけ伝えたいことという記事に書きました。かけたお金は、子供に返してもらうものではない——あの記事で書いたことは、今も変わっていません。
今日からできる小さなこと——謝ったあとに、何をするか
謝って終わりにしないでください。子供にとって本当に意味があるのは、「ごめんね」の次の一言です。
ひとつめは、「じゃあ、どうする?」を一緒に決めること。「英語、どうしたい?やめる、減らす、やり方を変える、どれがいい?」と、選択肢を三つ並べて聞いてみてください。「やめる」を選択肢に入れるのが、怖いかもしれません。でも、やめるという選択肢が本当にある状態で「続ける」を選んだ子は、自分の英語として続けていけます。逆に、やめる道がないまま続けさせられた英語は、ずっと親のものです。
もしお子さんが「やめる」を選んだら、それはあなたの負けではありません。一度自分で選んでやめた子は、戻ってくる時も自分で戻ってきます。押し付けられてやめた子は、戻る道を知りません。その違いは、何年か経ってから、はっきり見えてきます。
ふたつめは、「あなたのため」を封印して、「ママも一緒に」に言い換えること。「あなたのために続けてほしい」ではなく、「ママも英語、一緒にやり直したいんだ。付き合ってくれる?」。主語が「あなた」から「ママも」に変わるだけで、子供の肩から荷物がひとつ降ります。押し付けだった英語が、親子の共同作業に変わる瞬間です。
どちらも、うまく言えなくて構いません。ぎこちない言葉のほうが、子供にはちゃんと届くものです。
一人で全部背負っていると、不安が「押し付け」に変わりやすくなります。あい子供英会話では、日本人の教育プランナーが毎月、レッスンの外で先生と一緒にお子さんの進捗を分析し、ご家庭にお伝えしています。親と、先生と、プランナー。三者で一人の子を見る形にしているのは、お母さん一人が「この子の英語の責任者」にならなくていいようにするためです。
「ごめんね」と言えた夜のあなたは、弱かったのではなく、正直だったのだと思います。その正直さを、明日からの言葉に少しずつ移していけばいい。押し付けていた自分に気づいた母親として、私もまだ、その途中にいます。だから一人で抱えないでください。子供の英語を「一緒に」に戻す道を、私たちと一緒に探していきませんか。