学校に行きづらい時期、英語だけは続けていた話|同じ母親として、家の中の小さな「外」について

公開日: 2026-10-13
学校に行きづらい時期、英語だけは続けていた話

朝、玄関。靴は履いた。ランドセルも背負った。でも、ドアの前で足が止まる。「行きたくない」と言うわけでもなく、ただ、動けない。そんな朝が、何日か続いた。

「今日は、休もうか」。そう言ったあと、リビングに戻る子供の背中を見ながら、私は頭の中で、学校のことばかり考えていました。先生に何て連絡しよう。明日は行けるだろうか。何が原因なんだろう。——英語なんて、それどころじゃない。

ところがその日の夕方、レッスンの時間になると、子供は自分でタブレットを持ってきて、画面の前に座ったのです。学校には行けなかったのに。私は、どうしていいかわかりませんでした。喜んでいいのか、止めるべきなのか。

これは、ある時期の私自身の記憶と、同じような時期を過ごしたご家庭から何度も伺ってきた話を、重ねたものです。先に、はっきりさせておきたいことがあります。私は医療や心理の専門家ではなく、学校に行きづらい理由や対応について、断定できることは何もありません。そして、この記事は「英語だけは続けさせましょう」という話ではありません。お子さんが嫌がるなら、休む。それが前提です。

登校しぶりの時期に習い事を続けるかどうか——正解はありません

学校に行きづらくなったとき、多くのお母さんが最初に考えるのは、「習い事も全部やめて、休ませたほうがいいのでは」ということです。学校に行けないのに習い事だけ続けるのは、なんだか筋が通らない気がする。周りにどう思われるかも、気になる。

その一方で、「この子から、全部を取り上げていいんだろうか」という迷いもある。どちらも、お子さんを思っているからこそ出てくる気持ちで、どちらかが間違っているわけではありません。

私が伺ってきたご家庭の中には、レッスンを一度お休みしたご家庭も、続けたご家庭もあります。続けた場合に共通していたのは、「親が続けさせた」のではなく、「子供が自分で座った」ということでした。判断の軸は、いつも、お子さん自身の様子です。

家の中の、小さな「外」

では、学校に行けない時期に、なぜ英語のレッスンには座れたのか。あとから振り返って、私はこう思っています。あの時間は、子供にとって「勉強」ではなく、家の中にある小さな「外」だったのではないか、と。

学校に行きづらい時期、子供の世界は、家族だけになりがちです。家族は安心できる相手だけれど、家族しかいない世界は、少し狭い。そこに、画面の向こうから、家族ではない大人が、自分の名前を呼んで、自分にだけ話しかけてくれる時間が、一日に10分か20分だけある。学校の先生でも、クラスメイトでもない。評価もしないし、比べもしない。ただ、今日も来たね、と笑ってくれる人。

それが、その時期の子供にとって、外の世界とのつながりを細く保つ糸になることがある。家から一歩も出ずに、「自分は人と関われる」という感覚を、失わずにいられる時間。私はそう感じています。ただし、これはあくまで一人の母親の実感であって、すべてのお子さんに当てはまると言うつもりはありません。

続けたのは、「頑張らせる」ためではありませんでした

ここは、誤解されたくないところです。あの時期の英語は、遅れを取り戻すためでも、せめて何かはやらせておくためでもありませんでした。もしそういう気持ちで座らせていたら、たぶん、子供はすぐに座らなくなっていたと思います。

学校に行きづらい時期に必要なのは、頑張らせることではなく、安心して人と関われる場だと、私は思っています。英語はたまたま、わが家にとってその場になっただけで、ほかのご家庭では、それは絵画教室かもしれないし、祖父母の家かもしれない。大事なのは、英語ではなく、「その子が安心して座れる場所が、一つでもあるか」です。

「できた」という小さな感覚が、子供の中で自信になっていく話は、以前子どもの自己肯定感を育てる英語教育|「できた!」が自信になるという記事に書きました。あの時期の子供に必要だったのも、英語力ではなく、この「できた」の感覚だったのだと思います。

今日からできる小さなこと

もし、お子さんが自分からレッスンに座るなら。ひとつ、呼び方を変えてみてください。「英語の勉強」ではなく「先生に会う時間」。「今日、先生に会う?」と聞くだけで、その時間の意味が、課題から、人との約束に変わります。行きづらい時期に、「勉強」という言葉は、それだけで重いことがあります。

そして、座れなかった日を責めないこと。「今日は休みにしよう。先生には伝えておくね」。それだけで終わりにしてください。「昨日は座れたのに」も、「せっかくなのに」も、いりません。休むことも、続けることの一部です。学校に行けなかった日と同じように、レッスンに座れなかった日も、その子にとって必要な日だったのだと思います。

環境について、一つだけ。あい子供英会話では、テストをしません。英語を嫌いにさせないためです。そして、フィリピンの先生たちは、子供を笑顔にすることを、レッスンのいちばん大事な仕事だと考えています。毎月のトレーニングでも、そこを繰り返し確認しています。マンツーマンなので、周りの子の目もありません。学校に行きづらい時期のお子さんに、私たちが「これがいい」と勧めることはできません。ただ、もし座りたいと本人が思ったときに、そこが安心して座れる場所であるように、と思って作っています。

玄関で動けなくなった朝の、あの背中を思い出すと、今でも胸がきゅっとなります。あの時期を過ごしているお母さんが、この記事を読んでいるなら、どうか、一人で抱えないでください。正解を持っている人は、たぶん誰もいません。でも、同じ朝を知っている母親は、ここにいます。お子さんの安心できる場所を、一緒に探していけたらと思います。

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